本編①

少しずつ蒸し暑くなってきた、色があせた扇風機を見つめながら、そんなことを思う。

もうすぐ日が暮れるというのに、部屋の中の熱気は消える気配がなかった。

ああ、また季節が廻ろうとしている。春から夏へ。

「ウケる。」

部屋の中の熱気からでしか、季節の変化を感じ取れない自分を笑った。

久々に言葉を発したせいで、声が少し掠れていた。

 

ガチャガチャ。キィ。「ただいま~。」

母が仕事から帰ってきた。いつもだいたいこの時間だ。18時になるかならないか。

朝6時に起きて家事をこなし、8時には家を出ていく。えらいなぁ、なんて人ごとの様に思う。

私は、おかえり、と、言えなかった。

 

パソコンに向かい、文字を打ち込む。キーボートをたたく音が、心地よく聞こえる。

最近、鑑賞した映画を記録するようになった。

①記録することで、自分自身のインプットになる。

②文章を書くことが好きで、それを誰かに読んでもらえる。

そんな理由からブログを始めた。

 

自己満足だということはわかっている。でも、自分が書いた記事が、誰かに読まれるのは嬉しい。それが、1人だろうと2人だろうと嬉しい。自分自身を認めてもらえているような錯覚を起こす。私レベルの物書きなど、この世に溢れるほどいるのはわかっている。その溢れる物書きの中から、どういうわけか私にたどり着いてくれた。私の文章を読んでくれた。それだけで、身に余るほどの幸せを感じる。

 

それなのに、なんとコメントまでしてくれる人が現れた。ニックネーム、レオナルド。

彼(おそらく男性だろう)は少し前に突然現れて、私の文章を面白いといってくれた。

最近またコメントをくれたので、きっとこのブログをチェックしてくれているのだろう。

どうやって彼は、私のブログにたどり着いたんだろう。なぜ、私なんかの文章を気にしてくれるんだろう。疑問はいくつかあったけど、知らない人に褒められるのは、素直にうれしかった。私の外見でもなく、私の地位でもなく、私自身の能力を認めてくれる人がいる、そう思えた。