タイニー・ファニチャー

モラトリアムを抜け出せない、全てが中途半端な女性の物語であり、レナ・ダナムの生き血で描いた物語でもある。

タイニー・ファニチャー(字幕版)
 

 

タイニー・ファニチャーという映画を観た。アマゾンプライムで課金しないと観られなかった。課金してまで観たかったのは、このビジュアルがとても気になったから。そして、キャッチコピーの「職なし、夢なし、居場所なし」という言葉が、まさに私自身のことだと思ったから。

 

主人公オーラは大学を卒業したものの、職が見つからず実家に戻ってきた。しかも恋人と別れたばかり。モラトリアムの真っ最中だ(モラトリアムとは、肉体年齢的には成人しているが、経済的に自立できず、社会的な責任を果たせない状態のことをいう)。

男性にアプローチをかけるも何かうまくいかず、適当に職を見つけるも給料の低さにすぐ辞め、自分のやりたいことを見失い、大切な友人のことも蔑ろにしてしまう。

 

邦画でモラトリアムといえば、「もらとりあむタマ子」が思い浮かぶ。主演のタマ子を演じるのは前田敦子。モラトリアムの最中にいるタマ子の、ぶすっとしたかわいらしさを感じる作品が「もらとりあむタマ子」だとすれば、「タイニー・ファニチャー」は、オーラのぶすぶすぶすっとした、生身のどうしようもない人間らしさを感じる作品だ。

 

もらとりあむタマ子 [DVD]

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  • 発売日: 2014/06/25
  • メディア: DVD
 

 

主演のオーラを演じるのはレナ・ダナム。主演でありながら、監督・脚本も務めている。こんな表現ができてしまう、レナ・ダナムが恐ろしくて仕方がないのは私だけでしょうか?いや、レナ・ダナムに対してだけではない。私はこの映画が恐ろしくて恐ろしくて仕方がないんだ。怖すぎる。なんてもんつくってくれちゃってんだ(褒めています)。

 

一番恐ろしかったのは、オーラがTシャツにパンツで家をウロウロする姿が何度も映ることだ。オーラはお世辞にも、スタイルがいいとは言えない。すごく美人というわけでもない。彼女が下着でウロウロする姿は、セクシーというより見えちゃいけないものが見えてる!感がある(あくまで個人的な意見です)。

 

そんなオーラを、他の役者ではなく監督であるレナ・ダナム自身が演じているということ。自分(監督)が望むものを、自分(役者)が演じるということ。完璧ではない自分の姿を、隠すことなく恥じることなくドカンと画面に映し出したこと。そんなレナ・ダナムの度胸と覚悟と表現への情熱が、すごいを通り越して怖い。同じ表現を志す者として、畏敬の念を感じてしまうのだ。そんなことされちまったら、オイラ太刀打ちできないぜ・・・という気持ちになる。

 

他にも、寝汗がすごく匂うんだろう描写とか、ピッチピチのインナーを四苦八苦しながら履いている姿とか。女性としては、マイナスになっちゃうんじゃないか!?と思われることでも、オーラという人物を成立させるために必要なことは、全部詰め込み、隠すことなく演じ切る。自虐なのか?笑っていいのか?よくわからないが、ここに他の映画にはない魅力が詰まっている。

 

実は私も、自分で演じ、監督し脚本も書くような存在になりたいんだ。

だからこそ、タイニー・ファニチャー最高!って思ったし、レナ・ダナムをリスペクトします。

いつかこんな作品が作りたい。

 いつになるんだろう。私はモラトリアムから抜け出せるのかな。

 

あかり